抹茶きなこさんの作品。

一帯に響いていた虫の音が止まり、草食竜達の足音も遠ざかっていく。
次々と消えていく周りの気配、まるで潮の引いた浜辺に取り残されているようだ。
「・・・オイ、起きろ」
頭上からの一言、凍結した世界に僅かばかり音が戻る。
「別に寝ちゃいないわよ」
「いや嘘だろそれは」
即答、しかも人を嘘つき呼ばわりとは随分な応対だ。
「こう、精神を統一させてね」
「だな、もーすこしシャッキリした方がいい」
皮肉は限りなく上の空。
ツれない事この上ないけど、まあ今は状況が状況だ。
身体を起こして大きく伸びる。
「んー! 今どの辺りか分かる?」
背中と腰に付いた芝を払いながら問いかける。
ついでに適当にザックへ放り込んできた道具各種の確認。
装備一式の点検も済ませて私は彼を流し見た。
「北方に2キロって所か。
今なら逃げ切れなくもないだろうが、どーするよ?」
ぶっきらぼうに答える彼の千里眼は、未だ影さえ見えない”何らか”の姿を捕捉しているようだ。
溜め息一つ、使い古した革手袋を一際きつく嵌め直す。
・・・まったく、どーするも何も無いでしょ。
私が何と言おうと、彼自身の決意は既に固まっているようだし。
「知ってる? 東方の国には千客万来って便利な言葉があるらしいわよ」
つまり、付き合ってあげるわよ、と。
「なるほど、適当はオマエのモットーだしな」
つまり、上等だ、と。

左の拳同士をコツンと合わせる。
一体いつの頃からだったか、これが始まりの合図。
・・・ホント、ハンターの職業病は血の気の多さというか。
和やかな日常は置き去りに、私と彼は行動を開始した

☆3☆


☆1☆

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